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最近気になることば「無限ピーマン」

日本語の研究をしている人が、普段の生活の中でどのようにことばや表現を見ているのか知りたくありませんか。

 

 ある日のこと。ピーマンがたくさんあって、どうやって食べようかなと思い、ネットでレシピ検索をしてみました。すると「無限ピーマン」が出てきました。「無限ピーマン」て何?と思いました。話題になっているのでご存じの方もいると思います。いろいろ見ていくと「無限に食べられるピーマン」という意味。そうすると「無限に食べられる」=「たくさん食べられる」「おいしくて食べ続けられる」?どういうことなのだろうと思いました。「無限」は食べられる量を指しているのかな、と考えてみる。

 

 さっそく辞書で「無限」を調べてみました。「無限」は「数量や程度に限度がないこと。」(『デジタル大辞泉』)とあります。「無限ピーマン」は食べられる量なのか、(おいしく)食べられる程度なのか、少々頭が混乱します。また、「無限」の対義語は「有限」ということも辞書からわかりますので、「限りない」という意味合いが入ることが理解できます。その一方で「無限」というのはずっと食べ続けることになるわけだから、作るのも食べるのも実際は無限ではないでしょうと心の中で突っ込みを入れながら考えてみたりします。そうだとしても「無限ピーマン」がずっと食べられるようなものなら食べてみたい、と興味をそそります。「ピーマン炒め」「ピーマンの〇〇和え」のような従来からある名前より、何か魅力を感じます。「ピーマン」をどのように調理するかを料理名からイメージできないことによるのでしょうか。ちなみに「ピーマン」といえば子供が嫌いな野菜のナンバー1食材です(カゴメ「野菜定点調査2025」)。それを「無限に食べられる」という意味の名前が付けられていたら、嫌いでもつられて食べてしまいそうです。

 

さて、ネットをいろいろと見ていると、無限キャベツ、無限もやし、無限きのこ、無限にんじん…いろいろあるのですね。野菜が多いのかなと思いますが、今では「無限大根サラダ」のような料理名にも、「無限つゆ」のように野菜ではないものにも「無限」が付いています。料理研究家による書籍『無限レシピ』ワニブックス(2017)『パウンドケーキ 無限レシピ』主婦と生活社(2023)なども出版されています。おそらく多くの人の心をわしづかみにするネーミングなのでしょうね。流行るということは世間で受け入れられているということです。

 

では、いつから「無限〇〇」というようになったのでしょう。興味が湧いてきます。朝日新聞にも無限ピーマンの話が取り上げられていました。梅吉さんという方が2016年7月ツイッター(現X)に投稿したのが最初だと言います(朝日新聞2022年1月4日付)。記事によると、ツイッターで「無限に食べられるピーマン」としておかずが紹介されていたものをアレンジして様々に「無限ピーマン」が出回ったということです。最初に見たツイッター投稿は削除されてしまったとのこと。無限ピーマンブームに発展した話が紹介されています。

 

ネット上では2017年には「無限レシピ特集」が作られているので、「無限〇〇」はあっという間に広がったことがわかります。

実は商品化もされています。「パリパリ無限キャベツのもと」「パリパリ無限もやしのもと」が販売されていますし、お菓子にも「無限エビ」「無限のり」などがあります。『東京ウォーカー(全国版)』によると、「亀田製菓が20212月に世に送り出したのが「無限エビ」。発売からわずか1週間で100万袋を販売。」(2021629日付)とあります。ネーミングの効果でしょうか。大ヒットですね。食べたことのある方もいるかもしれません。

 

この「無限」ということばが気になるのでさらに注目してみます。アメーバブログ内で検索すると「無限にいける」「無限にできる」という表現が2000年代中頃から使われています。タレントの中川翔子さんが「スイカすき、ヒトタマ余裕でいけるくらい!ホルモン大好き、無限にいけるー。」(2005年9月28日付)と述べているものが初期のようです。すでに20年も経過しています。他のデータでも探してみたらもう少し遡れるかもしれません。「無限に」の形で動詞「いける」「できる」にかかっている使い方です。「食べられる」も同様の使い方ですね。中川翔子さんのブログの続きに「カルピスとピルクルも無限にのめる。」とありました。「無限に~する(動詞)」はその頃から使われてきたのかなぁと予測することができます。もしかすると「無限に食べられる〇〇」という表現は2005年頃にはすでに存在していた可能性もありますね。

 

こんなふうに「無限ピーマン」からいろんな方向に考えが及んでいきます。ことばの上で、時代を遡ってみたり、表現の広がりをみたり、類似する表現を観察したり、いろいろな見方で探ることができます。そして「無限〇〇」はほかにどんなものが作られていくのだろうと思いをめぐらすことができますね。オリジナルの「無限〇〇」を作ってもよいでしょう。

以上、最近気になることばを取り上げてみました。普段の生活の中でも、ふと立ち止まってみるとひとつひとつのことばにさまざまな特徴や歴史があり、探ってみると楽しいです。あなたのとっておきのことばや表現を見つけてみてください。

 

櫛橋比早子(日本工業大学)

【参考資料】

朝日新聞クロスサーチ

カゴメ「野菜定点調査2025

https://www.kagome.co.jp/library/company/news/2025/img/2025082801.pdf

デジタル大辞泉

東京ウォーカー(全国版)https://www.walkerplus.com/article/1032326/