突然ですが、まずクイズを出します。「正解」という語があります。この「正解」は大学生の雑談の中で、どの話題について話している時に一番多くつかわれるでしょうか?
① 漫画・アニメ ②学校の思い出 ③天気 ④ファッション ⑤スポーツ
「正解」はテストと関係あるから、「②学校の思い出」かな、と思った人が多いのではないでしょうか。しかし、実際は「④ファッション」なのです。みなさん、外に出かけるとき、あるいはどこかを訪問する時に「何を着ていけばいいか」悩んだことはありませんか。もちろん、ファッションに正解はありません。しかし、正解がないからかこそ、「何が正解なんだろう?」と迷うのですね。
私は「話題が変わるとどう話し方が変わるか?」ということを研究しています。上のデータも憶測で言っているのではなく、友人同士の大学生240名にいろいろな話題を指定して雑談を指定してもらい、それを集めて分析をして得られた結果です。(この集めたデータを「コーパス」と言います。今回は自分で『日本語話題別会話コーパス:J-TOCC』というコーパスを作って調べました。)
なぜ、私が「話題」について研究しているかというと、それは「日本語教育」のためです。今、日本には、日本語を母語としない外国人の方が増えています。しかし、その人たちがいつまでも日本語を話せないままでは、その人たちも困るし、日本に住んでいる日本語話者のほうだって困ります。言葉がわからなければトラブルも起こります。こうした人のための「日本語教育」はみなさんが学校で英語を学ぶ以上に死活問題であると言えます。
でも、日本人が英語を学ぶのが大変なのと同じレベルで、外国人が日本語を学ぶのは大変です。漢字のことを考えればそれ以上かもしれません。
しかし、英語でも同じことなのですが、人間なら誰でも「この分野ならたくさん話せる、語れるけど、この分野は苦手」というものがあるわけです。入試問題の英文は読めないけど、目の前に同じアイドルが好きな人がいれば、英語でコミュニケーションを弾ませるのは簡単だったりします。みなさん、普段の自分の(日本語の)雑談を思い出してみてください。いろいろな話題をまんべんなく話していますか? 絶対にそんなことはなく、得意な話題・苦手な話題があるはずです。だったら、外国語を話すときも、得意な話題・苦手な話題があるのは当然ではないでしょうか? こんな発想で、私は話題別の日本語教材を作るための研究をしています。
私はすでに、日本語能力試験のための単語帳などを作っているのですが、N2の「流行」の章ではこんな例文が出てきます。
娯楽作品では、探偵は人気のある職業だが、泥棒も人気があったりする。泥棒のキャラクターはダイヤなどの宝を盗むが、お金には興味がなく、盗んだものを返却することも多い。また、考えてみれば不思議なことだが、しばしば銃からトランプを発射して戦ったりする。(話題別コーパス研究会2022:85)
みなさん、白いタキシードにモノクルをつけたキャラクターが思い浮かんだのではないでしょうか? 自分の興味のある話題なら、関連する単語をどんどん覚えられるのではないかと思っています。英単語張にもこういうものがあったらいいのにな、と思います。
中俣 尚己(大阪大学)
【参考文献】
中俣尚己(編)(2023)『話題別コーパスが拓く日本語学・日本語教育研究』ひつじ書房
話題別コーパス研究会(2022)『ミニストーリーで覚える日本語能力試験ベスト単語 N2合格2400』ジャパンタイムズ出版