· 

日本語お研究しよーとおもーみなさんえ

 きょーわ、コンテストのためのテーマおどのよーに見つければよいかとゆーことについて、みなさんえお伝えするために、この記事お書こーと思います。

 まずわ、今読んでいるこの文お声に出して読んでみましょー。

 

 この文を見て、みなさんはどう思いましたか。「読みにくい」と思ったでしょうか。あるいは、「変だ」と思った人もいるかもしれません。

 しかし、声に出して読んでみるとどうでしょう。きっと、普段の通りか、それに近い発音で読んだのではないでしょうか。少なくとも、「きょうは kyou ha」「みなさんへ minasan he」とは読んでいないはずです。

 

 私たちは普段、書かれている文字をそのまま発音して話しているわけではなく、また、発音している言葉をそのまま文字に書いているわけでもありません。「何を当たり前のことを言っているのだろう」と思うでしょうか。

 

 私たちが「わ」ではなく「は」、「よー」ではなく「よう」と書くのは、そういうルールがあるからです。そのルールは「現代仮名遣い」といい、実際の発音と文字が違っていても、ルールに従って書くことが正しいとされています。

 

 「現代仮名遣い」(1986(昭和61)年公布)は、1946(昭和21)年の内閣告示・訓令によって公布された「現代かなづかい」をもとにしたものです。

 「現代かなづかい」が制定されるまでは、明治時代が始まってからも、私たちが古典の授業で学ぶ「歴史的仮名遣い」が使われていました。

 

 当時の日本は近代国家を形成するうえで、どのような言葉を、どのように使うかという問題、いわゆる国語問題に取り組まなければなりませんでした。その中で、表記法、つまり仮名遣いのルールも決める必要がありました。

 

 ただ、ルールを決めるためには、そもそも当時の日本において、言葉がどのように使われているのかを調べる必要があります。そのために、「国語を調査する機関」をつくらなければならないと主張した人物がいました。それが、東京帝国大学教授であった、上田万年(1867-1937)です。

 

 彼は、国語問題を解決することは国家の義務であると考え、「国語」の統一をするために、1897(明治30)年、東京帝国大学文科大学内に「国語研究室」を設置します。そして、1900(明治33)年に文部省によって上田は「国語調査委員」の一人に任命されました。

 

 この「国語調査委員」に、補助委員として任命された人物に、上田の下で学んでいた保科孝一(1872-1955)という人がいます。保科は他に補助委員として任命された二名とともに、国語問題の調査・研究をしていました。

 

 そして、彼らは「字音仮名遣いは表音主義に統一しなければならない」と主張し、1900年の小学校令施行規則によって、教科書に使う仮名遣いは、音をそのまま表す「表音式仮名遣い」とすることになりました。長音(伸ばす音)を表すのに「ー」を使ったことから、「棒引き仮名遣い」とも呼ばれます。冒頭の文は、これをもとに書いたものです。

 

 しかし、「棒引き仮名遣い」は猛烈な批判を受け、1908(明治41)年に、わずか8年で廃止されて、以後、「現代かなづかい」の制定まで「歴史的仮名遣い」が使われることになりました。

 

 さて、長々と話をしてきましたが、結局何がいいたいかといいますと、「当たり前だと思っていることでも、実は当たり前でない(なかった)ことがある」ということです。ルールや「当たり前」は人によってつくられ、人によって変えられます。「当たり前」だと思っていることが、他の場所・時期では「変だ」「間違っている」と思われることがあり、その逆もあり得ます。

 もし、私たちがタイムマシンに乗って明治時代に行き、「現代仮名遣い」を使ったら、どうでしょう。きっと、「仮名遣いを間違えて覚えている」といわれ、試験では誤答とされてしまうでしょう。

 

 「変だ」と思ったら、「なぜ変だと思ったのか」を考えてみる。あるルールが「なぜ必要だったのか」、「どうやってつくられたのか」を調べてみる。あるいは、「当たり前」だと思っていることを、「なぜこうなっているのか」と考えてみたり、「本当に正しいのか」と疑ってみたりする。そうすることで、新たな発見やさらなる疑問が出てくるかもしれません。

 ルールや「当たり前」を、立ち止まって考えてみること。それが、研究の入口になります。

 

 最後に、「棒引き仮名遣い」で書かれて、実際に刊行された書籍を紹介します。初めは読みにくく感じるかもしれませんが、慣れれば詰まることなく読めるようになると思います。

 

保科孝一(1901)『国語教授法指針』宝永館

https://dl.ndl.go.jp/pid/1870346

   【国会図書館デジタルコレクションより】

 

 もし、明日から「棒引き仮名遣い」を使うようにルールが変わるとすれば、みなさんはどう思いますか。案外、「わたしわこっちのほーがいー」と思う人もいるかもしれません。

 

(永田 洋史)

 

【参考文献】

文化庁(2005)『国語施策百年史』ぎょうせい

保科孝一(1949)『国語問題五十年』三養書房